いつまで何のために?
いつまで誰のために?
腫れ上がる頭を抱えて
どれだけ崩れ落ちて
どれだけ血を吐いても

答えなんてどこにもなかった

私は誰なの?










accompanist









ネオン輝く江戸の夜。
裏路地で毎夜響くその歌声に、ついに足を止める。




「おい、お前」


「?」


ふい、を顔を挙げると見下ろす緑眼と目線がぶつかった。
途絶える歌声。
しかし深い色の碧眼の瞳は一寸も逸らすことなくその眼を、その視線を受け止め
剣戟を交わす如く絡み合う視線をそのままに、女の六弦を弾く指がその動きを止める。

そして訪れた静寂という脆き壁は口端を吊り上げた男の
たった一言によっていとも簡単に打破された。






「お前、俺の歌にノってみねぇか」






ふ、と海色の瞳を伏せた女の面に浮かんだのは妖艶たる微笑み。




「貴方はどんな唄、聴かせてくれるの?」


「酔わせてやるよ。止むのがもったいねぇくらい、
 六弦手懐けてるその小枝みたいな指がへし折れるまで唄い続けてやらぁ」





――――"そこから"だしてやるよ。





「あら、頼もしい事」




小さく溜息を吐き出して一拍置いた後、
女は道端の低い塀から腰を上げた。




「なら、私も歌いましょう」




――――あなたのその深々たる声が、枯れるまで。











わたしのこの目を あげましょう
わたしの耳さえ 惜しみなく

助けを求めたりしないでいいように
期待は捨てた筈だけど

わたしの唇も 全部あげましょう



ここから出してくれるなら―――








差し出された女の掌を、男は迷いなく引き寄せた。
















「お前、名前は」














そして二つの影が、
江戸の闇に消えていった。





(song by Cocco/way out)








end